漆喰・生石灰クリームはともに長い歴史

 

日本の伝統的な建築材料である漆喰と、ヨーロッパをはじめとするいろいろな国でピラミッド、城郭、フレスコ画などで使われてきた長い歴史のある生石灰クリーム。どちらも石灰石を原料とし、仕上がりを見るとほぼ同じような質感です

さて、果たしてこの二つに大きな違いはあるのでしょうか。

 

漆喰・生石灰クリームの製造方法

1.焼成


土中窯

生石灰

まず、両方とも、原料となるのは石灰石を高温で焼成してできた生石灰です。

ちなみに、タナクリームに使われているのは高知県産の石灰石で、昔ながらの伝統的な徳利窯で焼成しています。

 

2.消化

次に、両方とも、これに水を加えて消化させます。消化とは、生石灰に水を加えると高温に発熱して消石灰に変わる化学反応のことです。非常に高温になり、蒸気を吹き出しながら生石灰が自然と粉々に砕けていく様子は、初めて見るとびっくりしますよ。そして、消化反応が終わると粉末状の消石灰ができあがります。

 

3.スサ・糊を加えて、漆喰の完成! 

昔ながらの漆喰は、そうやって出来上がった消石灰に、左官さんが現場でスサや糊を加えて水練りしてようやく完成します。

 

 

《スサ・糊とは?》

スサ

スサというのは、ひび割れを防ぎ、強度を高めるために使用する繊維質の材料で、麻や藁(ワラ)、紙、化学繊維などを用います。

糊は、ギンナン草やツノマタという海草を煮出したものを使用していましたが、現在は化学系の糊を使うこともあります。

 

日本のお城が好きな方は、職人さんが大きな容器でぐつぐつ大量の海草を煮出して糊を作っているところを、テレビで見たことがあるかもしれませんね。

 

《現場での材料調合について》

今でも歴史的な文化財、お城などは、昔の工法を忠実に守って、代々受け継がれてきた材料の配合を守って現場で調合することが多いかと思います。

 

しかし現在は、もっと手軽に使用できるように、必要な成分を混ぜ合わせた状態の粉末の漆喰も販売されています。最も一般的なものは、紙袋に入った粉末のもので、左官さんが現場で水練りして使用します。田中石灰工業の商品では、「たなか壁」がこれに該当します。こうしたものを利用すると、職人さんの長年の経験や高度な技術に全面的に頼らなくても施工することができますね。

 

 

4.水を加えて、生石灰クリームの完成! 

生石灰クリーム

そんな漆喰に対して、消石灰に大量の水を加えてクリーム状にして熟成させたものが、生石灰クリームです。

 

《生石灰クリームの添加物》

生石灰クリームも、施工のしやすさなどの観点から、田中石灰工業では工夫を凝らして、糊や骨材などそれぞれ必要なものを添加したものを「タナクリームシリーズ」として販売しています。

ちなみにタナクリームには、食品にも使われている安全な成分の糊を加えています。あとは、商品の種類により、骨材を加えたものもあります。

 

さて、この二つの違いは何?

 ここまで読み進めていただいて、皆さんはこの二つの違いについて、何かお気づきになりましたか。

 クリーム状か粉末かの形状の違い、中に入っているスサの有無、糊の成分の違い...違っているようでもあり、それほど違わないようでもあり、というところではないでしょうか。

 

《消えつつある違い》

 漆喰については、専門性を持つ左官さん以外にも使いやすくなるような方向に商品も開発されてきています。生石灰クリームについても、近年は漆喰をクリーム状にして塗りやすく進化したものとしても捉えられています。つまり、この二つの違いについては、はっきりとした区別が消えつつあるような感じがします。

 

《施工のしやすさ》

 施工のしやすさでいうと、左官さんの技術が必要な漆喰に比べると、生石灰クリームのほうが、一般の方は扱いやすいといえるでしょう。生石灰クリームは、容器を開けてすぐに使用できる、つまり自分で材料を混ぜ合わせる必要がなく、それでいて昔ながらの漆喰の風合いを手軽に施工できる材料ですからね。

 その逆に、漆喰は左官さんが現場でいろいろな材料を組み合わせて調合し、その伝統の技術力を活かして施工するのに適した左官材料といえるでしょう。

 

 《施工後に違いはある?》

ただし、施工後の壁については、漆喰も生石灰クリームも同じ消石灰が主成分ですから、空気中の二酸化炭素を吸収して自然に硬化し、やがてもとの石灰石に戻っていきます。

 そして、タナクリームの特徴である、不燃性、調湿・消臭・抗菌効果などは、ともに持ち合わせています。

 

《様々な商品がある理由》

 このサイトでは、壁塗り初心者の方がDIYに挑戦するためには、タナクリーム1日仕上げをおすすめしています。

でも、DIYではなくてプロの左官さんに純日本風の漆喰で施工してほしい、など様々なニーズにあります。それに応えるために、今日の漆喰と生石灰クリームの様々な商品ラインナップが存在しているのですね。

 

参考文献:100のキーワードで学ぶ世界で一番やさしい自然材料(エクスナレッジムック)

 

[執筆:スタッフF]